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コラム1:サンゴの生態

 一部のサンゴは、一年のうちのたった一晩か二晩に同調して一斉に産卵することが知られています。これは一般に「サンゴの一斉産卵」と呼ばれ、しばしばテレビや新聞などのメディアでとりあげられるため、ご存知の方も多いかもしれません。特にミドリイシ属サンゴの一斉産卵は有名で、一つ一つのポリプから、卵と精子が入ったバンドルと呼ばれる袋状のピンクの塊を大量に放出します。放出されたバンドルは卵の浮力によって上昇し、水面にたどり着くと裂開します。そして中に入っている卵と精子が解き放たれ、他の個体の卵や精子と受精します。一斉産卵の際には、放出されたバンドルを食べようとチョウチョウウオなどたくさんの魚が集まり、さらにその魚を食べる肉食の魚も沖合からやってくるため、サンゴの周りはお祭り騒ぎになります。

 

 また、サンゴは褐虫藻が光合成によって作り出した有機物の一部をもらいうけますが、その全てを自分自身の栄養とする訳ではなく、実にその半分程度を粘液として体外に排出します。この粘液は、サンゴの上に住むダルマハゼやサンゴガニなど多くの生き物によって餌として利用されています。

しかし、カニや魚などの生き物に利用されるサンゴの粘液はごくわずかで、大部分はサンゴの体を離れて私たちの目には見えない微小な有機物のかけらとして水中を漂います。そしてそういった小さな有機物は、これまた私たちの目には見えない小さな微生物の餌となります。サンゴ礁を含む水中の生態系は、そういった目には見えない微生物によって下支えされています。つまりサンゴは産卵の時期だけではなく、粘液を介した微生物への栄養供給を通じて、生態系全体に大きな影響を与えているのです。

 

○参考文献

 中嶋亮太、田中泰章(2014) サンゴ礁生態系の物質循環におけるサンゴ粘液の役割

        ―生物地球化学・生態学の視点から―  日本サンゴ礁学会誌 16: 3-27.

 西平守孝、酒井一彦、佐野光彦、土屋誠、向井宏(1995) シリーズ 共生の生態学5

     サンゴ礁生物がつくった〈生物の楽園〉 平凡社 

 大矢正樹、岩尾研二(1998) ミドリイシ属サンゴの卵放出量 みどりいし 9: 30-31.

 Wild C et al. (2004) Coral mucus functions as an energy carrier and particle trap

         in the reef ecosystem. Nature 428: 66-70.

 

(文責:椿 玲未)

 
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