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コラム4:サンゴの白化

 サンゴの白化現象にはさまざまな原因がありますが、海水温の上昇が引き金となることが多いため、同じ時期に全世界的に大規模な白化が起こることがしばしばあります。中でももっとも大きなインパクトがあったのが、1997年から1998年にかけて世界中の海で起こった大規模白化現象です。この未曾有の大規模白化からすでに20年ほど経過していますが、サンゴは種類によって回復力が異なるため、一見サンゴ礁が1997年以前と同じレベルにまで回復しているように見える地域でも、実際には大規模白化以前には普通にいた種が姿を消したままということも決して珍しくはありません。

 

生きたサンゴ(撮影:山城 秀之)

白化したサンゴ

 

 また、地域によってもサンゴ礁の回復速度には大きな差があります。特にカリブ海のサンゴ礁の回復力の遅さは非常に有名で、現在でも白化したサンゴの上に海藻が広がり、以前のようなサンゴ礁生態系は今日まで復活に至っていません。一見不思議なこの現象には、意外な生物が関係していると考えられています。カリブ海は陸地に囲まれた比較的閉じた生態系なので、ミシシッピ川など大きな河川から大量に流れ込む有機物はカリブ海内にとどまります。カリブ海には海綿が多く生息しているため、川から流れ込んだ有機物の多くが海綿によって消費され、排泄物などもっと大きな有機物として水中に排出されます。そのため、海綿由来の排出物によって海藻の成長が促進され、増えた海藻がまた代謝産物の一部を海面が利用できる溶存態有機物として排出し、それによってまた海綿が増えるというフィードバックが生まれます。この海綿と海藻双方が互いの成長を促進しあう悪循環がひとたび生まれてしまうと、成長が遅いサンゴはいつまで経っても海藻との場所争いに勝つことはできず、サンゴ礁が回復しないという構図が浮かび上がってきたのです。

またちがう種の海綿は、他の生物を介した相互作用ではなく、サンゴの体表を覆い尽くすことによって直接サンゴを殺してしまうことが知られています(テルピオス属)。テルピオス属の海綿は現在琉球列島のほとんどの海域で確認されており、その影響が懸念されています。

 

 白化や他の生物が原因で死んでしまうと、サンゴは石灰質の骨格だけが残されます。厄介な刺胞を持ったポリプがいない死サンゴの骨格は、付着生物の絶好の住処になります。サンゴが死んでしばらくは骨格はそのままの形で残りますが、ツクエガイやイシマテなどの二枚貝やホシムシ、穿孔海綿などの生物がサンゴの内部を掘り進み、ブダイなどが表面についた藻類を骨格ごと削り取ることによって内部からも外部からも侵食され、やがて元の形を保てずにバラバラに崩れてしまいます。バラバラになった死サンゴに埋め尽くされた海底は生き物の気配が希薄で、元のサンゴ礁のような賑わいはありません。

 

白化したサンゴ

 

参考文献

山城秀之(2016) サンゴ 知られざる世界 成山堂書店

Pawlik, J. R., Burkepile, D. E., & Thurber, R. V. (2016). A vicious circle? Altered carbon and nutrient

    cycling may explain the low resilience of Caribbean coral reefs. BioScience, 66(6), 470-476.

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