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コラム2:サンゴたちの場所取り合戦

 サンゴが属する刺胞動物の特徴は、刺胞と呼ばれる攻撃に特化した特殊な細胞を持つことです。刺胞細胞の中には針とコイル状に折りたたまれた状態の細長い管(刺糸)が入っていて、細胞が刺激を受けるとこれらが瞬時に外に飛び出して相手に突き刺さります。刺胞細胞は一番獲物や外敵に触れやすい触手に密集していますが、隣のサンゴを攻撃するときに使う隔膜糸にも存在しています。攻撃に特化したスイーパー触手にはより強力なタイプの刺胞が充填されることも知られています。こうしてサンゴ達は夜な夜な刺胞を使った静かな陣取り合戦を行なっているのです。

また、刺胞を使った直接対決をせずして自陣を拡大するサンゴもいます。褐虫藻からの光合成産物に依存するサンゴにとって、日当たりは生存に関わる非常に大きな問題です。そのため、相手に覆いかぶさるようにして成長することで褐虫藻の光合成を妨げ、相手を退けることができるのです。こういった戦術は、直接対決では劣る代わりに成長が速いテーブル状のミドリイシなどでよく見られます。一般に、サンゴでは刺胞による攻撃能力が高い種は成長が遅く、成長が速い種は攻撃能力が低いという傾向があります。こういった「こちらを立てればあちらが立たず」な関係のことをトレードオフと言います。

 

 ここまでは海底に固着したサンゴ同士の戦いを見てきましたが、サンゴの中には海底に固着しない「自由生活性」のサンゴもいます。そういったサンゴの場合は戦いを避け、ゆっくりと相手から離れて距離をとる場合もあります。

 

参考文献

西平守孝、酒井一彦、佐野光彦、土屋誠、向井宏(1995) シリーズ 共生の生態学5

   サンゴ礁 生物がつくった〈生物の楽園〉 平凡社 

山城秀之(2016) サンゴ 知られざる世界 成山堂書店

 

(文責:椿 玲未)

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